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工具補正機能のひとつ「工具径補正」とは?使用方法とおすすめ製品
最終更新日:2024.11.19 / 公開日:2019.03.07
NCプログラムは座標を指定して工作機械の工具を動かすプログラムです。ただし、単に設計の輪郭に座標を合わせても、想定している寸法には加工されません。当然、工具のサイズを考慮する必要があります。 こちらでは、工具のサイズによって加工面の位置を補正できる「工具補正機能」と、その機能のひとつである「工具径補正」についてお話します。機械加工システムの導入を検討されている方は、基礎知識のおさらいとしてお読みください。
工具補正の基礎知識
NCプログラムで動かすNC工作機械の多くには工具補正機能が搭載されています。まずは、工具補正機能の基礎知識についてご案内します。
工具補正機能とは?
NC工作機械の多くは複数の工具を装着できます。当然ながら、各工具のサイズは同じではありません。NCプログラムでは座標を指定して金属加工を行いますが、サイズ違いの工具を同じ座標で扱うと加工面がずれてしまいます。
工具補正機能とは工具ごとの長さや径を認識し、座標を補正するための機能です。制御装置の工具補正メモリに工具データを入力し、各工具を補正できるようにします。この補正を行うと各工具のサイズを意識することなく、同じ座標で加工できるようになります。
工具補正の主な種類
工具補正には主に以下のような種類があります。
・工具位置補正
工具ごとの位置ずれを補正する機能です。
・工具長補正
工具ごとの長さの違いを補正する機能です。
・工具径補正
工具ごとの径に違いを補正する機能です。
工具径補正の特徴
工具径補正は工具の径に適応される工具補正です。
この機能の特徴についてご説明します。
工具径補正の必要性
工具による加工では加工面の輪郭と工具軌跡が全く同じになることはありません。必ず工具そのものによる「加工しろ」が生まれているためです。これは、極細のエンドミルなどでも例外ではありません。
工具ごとの半径を意識した補正が設定されていなければ、意図していた輪郭寸法に対して工具の半径ぶんのずれが生じてしまいます。工具径補正はこのずれをなくし、設計どおりの寸法に輪郭加工を行うための補正です。工具径補正が有効になっている場合、加工品輪郭からの等距離工具軌跡が自動的に計算され工具は輪郭から等距離を保って移動します。
工具径補正で使用するGコード
以下は工具径補正で使用する代表的なGコードです。
・G41
工具進行方向の左側で工具径補正を有効にします。
・G42
工具進行方向の右側で工具径補正を有効にします。
・G40
工具径補正が無効になり、工具の中心と指定経路が同一になります。
工具径補正の方向
工具の回転方向は原則として正転です。ダウンカットでは工具の回転方向と工具の進行方向が同じになり加工物は進行方向に対して右に位置します。対してアップカットでは回転方向と移動方向が逆となり、進行方向の左に位置しています。
ダウンカットでは左向きの補正が必要なため、使用するコードはG41です。アップカットでは右向きの補正を行うためにG42を使用します。
工具径補正のプログラム
工具径補正プログラムの注意点についてご案内します。
・スタートアップの指令
工具径補正は加工に入るブロックの前に行っておく必要があります。この指令を「スタートアップ」と呼びます。
・オフセットモード中のコーナー加工
あらかじめ指定していたオフセット(工具の半径)よりも小さいRのコーナー加工を行おうとするとアラートが表示され加工が止まります。この際は、さらに半径が小さい工具で対応する必要があります。
・Z軸の加工後
NCプログラムは最大で3ブロック先までしか読み込みを行いません。Z軸の加工を挟んだあとにXY軸の移動を行うケースなど、次のXY軸の移動までに4ブロック以上の間隔がある場合、あらかじめ指定していた工具径補正が生かされない場合があります。原則として工具径補正はG40を使用するまでキャンセルされませんが、このようなケースでは注意が必要です。
フアクトのおすすめ製品と使用方法
弊社では工具径補正が可能なCAD/CAM「FeatureCAM」を提供しています。
設計データをベースにボスやポケットなどの加工情報を設定するだけで、NCプログラムを簡単に作成可能です。特に何も設定をしていない場合、輪郭から工具半径ぶん避けたNCプログラムが生成されます。工具径補正を有効にする場合はチェックを入れるだけでGコードを出力することができるため、加工プログラムの作成経験が浅い方でも簡単です。NCプログラム作成システムをお探しの方はぜひ、購入をご検討ください。
工作機械による加工に必須の知識
工具径補正は想定している加工を行うために必要な知識です。また、現場ではそれをNCプログラムに落とし込むノウハウも求められます。少しでも習得コストを軽減するため、わかりやすいシステムを導入するのがおすすめです。