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製造業DXの事例15選 製造業DXの成功ポイントも紹介

最終更新日:2025.03.03 / 公開日:2025.01.31

製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)は、業務効率化や生産性向上、競争力強化を目指す上で、欠かせない取り組みとして注目されています。

しかし、具体的な事例や成功へのヒントがなければ、DX導入をどのように進めるべきか迷う企業も少なくないでしょう。
そこで、この記事では、製造業におけるDXの基礎から、実際にDXに取り組んでいる国内の製造業企業の事例まで幅広くご紹介します。さらに、ツールの活用や導入のポイントについても詳しく解説します。

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製造業DXとは?

製造業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して製造プロセスや経営全体を変革し、生産性向上、品質改善、コスト削減、競争力強化を目指す取り組みのことです。

これまで製造業は設備や人の手による作業が中心でしたが、IoTやAI、クラウド、3D CAD/CAMツールといった先端技術の登場により、業務の可視化やデータ活用が加速しています。
DXを進めることで、生産ラインの最適化や、リードタイムの短縮、品質管理の高度化を実現でき、業界全体の競争力向上にもつながります。

製造業DXの事例15選

実際に製造業でDXに取り組む企業の具体的な事例を15点、ご紹介いたします。
ぜひ、取り組みの参考になさってください。

1.デジタルファクトリーで生産効率を向上
     (ダイキン工業株式会社)

空調・冷凍機事業を主力とするダイキン工業では、1978年の第1次オイルショック以降、工場内でのジャストインタイム(JIT)生産にこだわっているといいます。
近年、JITをベースに「設備モジュール」「1/N設備」「ローコストオートメーション(LCA)」の考え方に基づき、デジタルファクトリーの実現に取り組んでいます。これらを有機的にIoTで結びつけることで、高い生産性を目指しています。
さらに、現場の対応力を上げるために、熟練技術を早期に習熟させるための「デジタルトレーニングシステム」も策定するなど、仕組み作りを進めているそうです。

2.スマートファクトリーでIoTを活用
      生産効率向上と設備の予兆保全を実現
     (トヨタ自動車北海道株式会社)

トヨタ自動車北海道では、新型車「ヤリス」に搭載する駆動ユニットを生産するために新設したラインに、設備稼働情報の収集から蓄積、可視化、分析基盤までをワンストップで実現できるIoTシステムを導入し、生産効率の向上と設備の予兆保全を実現しました。

3.DXをけん引する人材育成に注力
     (アサヒグループホールディングス株式会社)

アサヒビールやアサヒグループ食品などを傘下に持つアサヒグループホールディングスでは、早期から、既存のIT人材とDX人材に求められるスキルの相違を認識し、DX推進のために「Value Creation人材像」を定義しました。
その上で、自社開発した育成プログラムの提供を開始したところ、想定の2倍以上の応募がといいます。受講した社員にDXをけん引してもらおうという狙いです。

4.AIで生産プロセスを改善
     (日本たばこ産業株式会社(JT))

日本たばこ(JT)では、たばこ事業のほかに、食品事業や医薬品事業も手がけています。 このうち、医薬品事業においてAIを活用し、創薬の効率化を進めています。具体的には、高性能コンピューター基盤を導入し、ヒトのデータを学習させたオリジナルのAIを複数、作成した上で、化合物創出のプロセスを効率化。
今後は、創薬の全工程へと順次拡大していくことを目標に掲げています。

5.IoTとAIを活用した予知保全システムを構築
     (株式会社デンソー)

自動車部品メーカーであるデンソーでは、デンソーグループ世界130工場の「設備・人・モノ」をネットワークでつなぐ「Factory-IoT」を実現しています。IoTから収集した各工場のデータを活用し、製造ラインの自律制御や可視化・自動化に関する技術開発に取り組んでいます。
さらに、AIによる外観検査の自動化、収集した故障・不良データの解析によって「24時間止まらない製造ライン」の実現に成功しています。

6.設計業務を効率化し、開発リードタイムを短縮
     (パナソニックEWエンジニアリング株式会社)

大手電機メーカーであるパナソニックEWエンジニアリングは、設備設計において3DCAD化を推進し、設計ミス・手戻りロスを低減し、効率化、高品質化を実現しました。効率化によって削減したルーチンワークの時間は、設計を考える時間に当てられるようになったといいます。
デジタルツインについては、下記の記事もご覧ください。
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7.全従業員向けにノーコード開発ツール導入で、
      デジタルの民主化を実現
     (株式会社LIXIL)

建築材料・住宅設備機器メーカー最大手のLIXILでは、ノーコード開発ツールを全従業員に導入し、個々の従業員がソリューションを創造できる環境を整えました。
導入後、業務へのソリューションを募集したところ、導入から1年で2万個のアプリケーションが開発され、そのうちの1,500個が正式に業務アプリケーションとして採用されました。

8.AR(拡張現実)技術を活用し、
      プロモーションでの顧客体験を革新
     (本田技研工業株式会社)

世界的な輸送機器メーカーである本田技研工業では、「Keep Dreaming」キャンペーンで、2023年にロサンゼルスの大型ショッピングセンターでAR(拡張現実)連動型の屋外広告を展開しました。
これは、QRコードを介してアプリを起動すると、壁に動画が映るというもの。内容は、同社が2050年までにカーボンニュートラルを達成するためにどのように取り組んでいるかを紹介しています。

9.全社を挙げてDXに取り組み、デジタル人材育成
      のためのスキルアッププログラムなどを実施
     (株式会社リコー)

事務機器や光学機器などを製造するリコーでは、全社を挙げてDXに取り組んでおり、「デジタルサービスの会社として価値提供するワークプレイスとお客様価値を拡大させる」ことを目指しています。
具体的には、「既存ビジネスの深化」「社内DXによる生産性向上・業務高度化」「顧客起点に立った新たな顧客価値の創出」の3つを実現することを掲げ、さらに「デジタル人材育成・強化」「リコーグループ共通のプラットフォームRICOH Smart Integration(RSI)による事業貢献」「オペレーショナルエクセレンス実現に向けた基盤整備と社内実践/利活用の促進」「成長領域のサービス創出に向けたAI技術の開発と実践」の4つの主要戦略を挙げています。
たとえば、「デジタル人材育成・強化」では、デジタル人材育成を加速化するために「デジタルスキル標準」を採用し、人的資本の流動性を加味した新たなスキルアッププログラムに取り組んでいるといいます。

10.「コネクテッド二輪車」で顧客体験を変革
     (ヤマハ発動機株式会社)

オートバイを中心とした輸送用機器を製造するヤマハ発動機では、「経営基盤改革」「今を強くする」「未来を創る」をテーマにDXを推進しているといいます。
たとえば、2020年にインドネシア市場向けに「コネクテッド二輪車」と専用アプリ「Y-Connect」を展開しました。コネクテッド二輪車は、愛車とペアリングすることで、バイクライフに役立つさまざまな情報が得られるというもの。燃費管理やメンテナンスタイミングなども知らせてくれます。

11.施工の全工程をデジタルでつなぎ
      「現場のデジタルツイン」を実現
     (株式会社小松製作所)

建設機械・鉱山機械の大手メーカーである小松製作所では、"コト"(施工オペレーションの最適化)と"モノ"(建設機械の自動化・自律化)による未来の建設現場を目指し、DXに取り組んでいます。
具体的には、シミュレーションアプリやダッシュボードアプリを活用し、これらをつなぐことで「現場のデジタルツイン」を目指しています。

12.バーチャル技術を活用して、
        顧客体験向上や地域貢献活動を実施
      (沖電気工業株式会社)

通信機器などを製造する電機メーカーの沖電気工業では、デジタルプロモーションにバーチャルキャラクター「緒希 ツナグ」を活用しています。
たとえば、オンラインショールーム「OKI Style Square Virtual」でエントランスに登場し、お客様を各展示コーナーに案内したり、同社主催のハイブリッドイベントでナビゲーターとして登場させたりなど、「デジタル×リアル」のプロモーションを実現しています。
また、コロナ禍を機にWebサイト上に「バーチャル工場見学」を展開。小学校で「出前バーチャル工場見学」を実施し、地域貢献活動にも取り組んでいます。

13.経費チェック自動化で差し戻し件数約70%減
      (ぺんてる株式会社)

大手文具メーカーである、ぺんてるでは経費の計算方法が複雑なため、チェック業務の負担が重く、差し戻しも多かったそうです。
そこで、経費精算ソリューションを導入した結果、社員はナビゲーションに沿って選択肢を選ぶだけで経費の計算が行えるようになり、申請、チェックのいずれの業務の負担も減らせ、従業員体験を変革することができました。
差し戻し件数も、約70%も削減できたといいます。

14.自社プラットフォームでデータを共有・活用
      (株式会社樋口製作所)

金型の設計や金属加工、部品の製造を手がける樋口製作所では、2017年に主要取引先であったメーカーのリコールがあったことで、DXに踏み切りました。
製造現場とデジタル技術を横断的につなぐ役割を担う「ブリッジエンジニア」で組織したプロジェクトチームにより、業務の可視化や、受注から出荷までの情報を社内全体で共有できるプラットフォームの構築に取り組んだといいます。
その結果、売り上げが増加する一方、ミスや不具合は3年間で40%も削減でき、コストダウンや、生産性、品質の向上につながりました。

15.IoTとノーコードツールを組み合わせ、
        現場社員がソリューションを実現
      (西機電装株式会社)

各種クレーンや産業機器の制御盤などを製造する西機電装では、IoTとノーコードツールを組み合わせることで、現場社員によって様々な業務改革を実現しました。
たとえば、総務部で毎月末に数日かかって取りかかっていた作業日集計・内容確認がワンクリックで行えるようになり、わずか5分で完了するようになったり、各管理職が部下の稼働時間・予算・実績時間をリアルタイムで把握し、工程調整、 指導できるようになったといいます。
同社の取り組みは、「全国クラウド実践大賞」を受賞しています。

製造業DXの成功ポイント

製造業DXを成功させるためには、次の5つのポイントを押さえましょう。

明確なビジョンと目的設定

製造業DXを成功させるためには、まず、何を目的としてDXを導入するのかを明確にすることが重要です。
たとえば、次のような目的が挙げられます。

  • ・生産性の向上(無駄の削減やリードタイムの短縮)
  • ・品質向上(不良品率の低減、検査自動化)
  • ・コスト削減(設備稼働率の最大化やエネルギー効率改善)

現場と経営層が目的を共有し、統一したビジョンを持つことで、スムーズなDX導入が可能になります。

業務課題の可視化と優先順位付け

DXを進める上で現状の業務課題を洗い出し、優先順位をつけることが重要です。
生産工程、設備稼働、人材リソースなどの課題を整理し、効果の大きそうな業務から優先的に改善していきましょう。

デジタルツールの適切な選定

DXには、適切なツール・テクノロジーの選定が欠かせません。
ツール選定時のポイントは、次の通りです。

  • ・現場ニーズへの適合...シンプルで直感的に使えるか。
  • ・拡張性と柔軟性...他システムやIoTデバイスとの連携が可能か。
  • ・費用対効果...初期投資と運用コストが適切か。

現場とIT部門の連携強化

製造業DXは、技術部門だけでなく、現場の従業員とIT部門の連携が成功の鍵を握っています。
現場との連携ポイントは、次の2点です。

  • ・現場の意見や課題をヒアリングし、具体的な解決策を策定する。
  • ・定期的に意見交換を行い、改善点をフィードバックする。

現場主導で小さな成功を積み上げることで、DXの浸透が進みやすくなります。

PDCAサイクルの継続的運用

製造業DXは一度、導入して終わりではありません。
継続的にPDCAサイクルを回し、改善を繰り返すことが重要です。

■PDCAの実施例

  • ・Plan(計画)...課題に対する改善計画を立案する。
  • ・Do(実行)...デジタルツールを導入し、業務改善を実行する。
  • ・Check(評価)...KPIをもとに効果測定を行う。
  • ・Act(改善)...次の施策や改善点を洗い出し、反映する。

まとめ

製造業におけるDXは、生産効率の向上、業務プロセスの最適化、コスト削減を実現し、企業の競争力を大きく引き上げる重要な取り組みです。
本記事でご紹介した15の事例からも分かるように、デジタル技術の活用によって、設計・生産・品質管理・設備保全といった各領域で具体的な成果が生まれています
製造業DXは一歩ずつ確実に進めることが成功のポイントです。現場の課題をデジタル技術で解決し、生産性向上やコスト削減、競争力強化を実現しましょう。

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