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【事例あり】製造業DXが進まない理由とは?経済産業省のガイドラインについても解説!
最終更新日:2025.04.28 / 公開日:2024.12.12
製造業DXが進まない理由とは、主に以下の3点です。
- ・人材・スキルが不足しているから
- ・予算に制約があるから
- ・組織内の文化と体制に問題があるから
製造業におけるDX(Digital Transformation/デジタルトランスフォーメーション)は、業界全体で生産性向上やコスト削減、人材不足の解消などの期待を背負っています。
しかし、日本の製造業ではDXの進捗が進まないという課題が浮き彫りになっています。
特に、中小企業における人材不足や予算の制約、技術の習熟度の低さがDX推進の障壁として挙げられています。
そこでこの記事では、製造業が抱えるDX課題の具体的な内容とともに、経済産業省のガイドラインを踏まえた解決策を解説いたします。
製造業におけるDXとは
まずは、製造業におけるDXの立ち位置を確認しましょう。
DXの定義
DX(Digital Transformation/デジタルトランスフォーメーション)とは、企業がデジタル技術を活用して業務の効率化やビジネスモデルの革新を図る取り組みです。変革を通して、持続的な成長や競争力の強化を実現しようというものです。
単なるデジタル化とは異なり、DXは企業全体の組織体制や文化をも変革させることを目的としています。
製造業におけるDXでは、製造プロセスやサプライチェーンにおけるデータ活用が中心で、データを駆使して現場作業や品質管理、生産管理などを最適化することが重要とされています。
デジタル技術を用いた業務の見える化や自動化などによって、企業は顧客ニーズに迅速に応えられる体制を構築できます。また、コスト削減や業務の効率化にも寄与します。
なぜ今、製造業でDXが求められるのか
製造業がDXを推進する背景には、いくつかの重要な要因があります。第一に、国内製造業が直面しているのは人手不足の深刻化と労働力の高齢化です。特に製造現場では熟練技術者の不足が問題視されており、彼らの技能をデジタルで継承・活用する必要性が高まっています。DXを通じて業務の自動化や効率化を図ることで、現場の生産性を向上させるだけでなく、人材不足への対応も可能です。
また、DX推進は競争力の強化にもつながります。グローバル市場での競争が激化する中、国内の製造業が生き残り、優位性を保つためには、データ活用を駆使した高精度な製造と品質管理が求められます。経済産業省もDXガイドラインを通じて、企業が持続的に成長するための指針を示しており、これに基づくデータ活用やクラウド技術の導入が推奨されています。
このように、DXの活用によってデータ駆動型の意思決定が可能になり、迅速かつ柔軟な生産体制を構築できる点が、今、製造業でDXが必要とされる理由です。
この結果、製造過程でのコスト削減や生産性の向上が期待できます。
製造業DXの目的とメリット
製造業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の目的は、デジタル技術を活用して業務の効率化と生産性向上を図り、競争力を強化することにあります。
特に、日本の製造業が直面する人手不足や生産コストの増加といった課題に対応するために、DXは不可欠な手段となっています。
具体的には、データの活用と業務プロセスの自動化を進めることで、従来の製造工程を最適化し、柔軟で持続可能な生産体制を構築することが目的です。
以下で詳しく解説します。
生産性向上、コスト削減を実現できる
DXの導入によって、製造プロセスをデジタル化し、データに基づいた効率的な意思決定が可能になります。
たとえば、Autodesk Fusion のようなCAD/CAMソフトウェアを利用することで、設計から製造までの工程を一元管理し、作業の無駄を削減できます。
また、クラウドベースのシステムによって、複数の部門や拠点間でリアルタイムな情報共有が実現し、意思決定のスピードと精度が向上します。
この結果、製造過程でのコスト削減や生産性の向上が期待できます。
サプライチェーンの最適化と競争力の強化を実現できる
DXはサプライチェーン全体の効率化にも貢献します。
IoTデバイスやセンサー技術を活用して、在庫管理や輸送工程をリアルタイムで把握することで、全体の最適化を図ることが可能です。
たとえば、IoTデバイスを用いて機器や在庫の状態をリアルタイムで監視することで、不必要な在庫を削減し、需給バランスの調整がしやすくなります。
この結果、外部環境の変化に対しても柔軟に対応でき、製造業としての競争力を一層強化することができるようになります。
顧客対応を向上できる
製造業DXのもう一つの重要なメリットは、顧客ニーズに迅速に応える体制を整えられる点です。 データを活用した生産計画の最適化や、需要予測の精度向上により、顧客からの発注に対して迅速に対応できるようになります。 これは、顧客満足度を高めるだけでなく、信頼性の向上にもつながります。
製造業DXが進まない理由
製造業のDXは、生産性向上やコスト削減、人材不足の解消を期待されているにも関わらず、多くの企業で思うように進んでいないのが現状です。
その要因としては、以下の3つが挙げられます。
人材・スキルが不足しているから
製造業においてDXを推進するには、デジタル技術やデータ解析のスキルを、持つ人材が不可欠です。
しかし、特に中小企業では、ITやデジタル技術に精通した人材が不足しています。
また、既存の従業員に新しいスキルを学ばせるための教育体制や研修プログラムも整備されていないことが多いため、スキルの習得が追いつかないという課題があります。
さらに、DXのための外部専門家を雇用するにもコストがかかり、人材確保が難しいという状況です。
このように、DXを実現するための「人材の質」と「スキル不足」が、製造業でもDX推進を妨げる大きな要因となっています。
予算に制約があるから
このような背景から、DXへの予算配分に対する懸念が生まれ、多くの企業でDXが停滞してしまうのです。
組織内の文化と体制に問題があるから
製造業では、従来の製造工程や手法に長年、携わってきた従業員が多く、急な変革には抵抗があるのが現実です。新しい技術の導入や業務プロセスの変更は、慣れ親しんだ方法からの脱却を意味するため、現場からの反発を受けやすく、組織全体でのDX推進が難航する原因となります。
さらに、DX推進のための明確なリーダーシップや体制が欠如している企業も多く、組織全体での取り組みとして確立されていないことも障壁となっています。
特に経営層からDXへの支持が不十分な場合や、DX専任の担当部署が設置されていない企業では、DXに必要な情報の共有や意思決定の迅速化が実現せず、プロジェクトが停滞してしまうことが多いです。
経済産業省のDXガイドラインとは?
上記のような課題を抱える製造業企業がDXを推進するには、経済産業省が発表しているガイドラインに準拠する必要があるでしょう。
経済産業省のDXガイドラインとは?
経済産業省は、2018年9月にレポート「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」を発表後、同年12月には「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」を公表しました。
さらに、「デジタルガバナンス・コード」と「DX推進ガイドライン」を統合し、その後も改定を加えて現在に至ります。
2024年10月現在、最新のガイドラインは「デジタルガバナンス・コード3.0」です。
3.0では、デジタルガバナンス・コードの目的である「DX経営による企業価値向上」が強調されており、さらに、デジタルガバナンス・コードの全体像を「DX経営に求められる3つの視点・5つの柱」と新たに整理されています。
ガイドラインに基づく製造業DXのポイント
同資料では、デジタルガバナンス・コードの全体像として「DX経営に求められる3つの視点・5つの柱」が掲げられています。
DX経営に求められる3つの視点とは?
1.経営ビジョンとDX戦略の連動
経営ビジョンの実現に向けたDX戦略を策定し、経営陣が主導する体制を整えることが求められます。DX戦略は、デジタル技術を単なる効率化手段ではなく、企業価値を高める投資と捉え、持続的な収益向上や顧客価値創出を目的とします。
2.As is-To beギャップの定量把握・見直し
現状(As-is)と目指すべき将来像(To-be)の間のギャップを明確にし、KPIなどの指標を使って進捗を定量的に評価します。これにより、DX戦略が経営ビジョンに適切に連動しているかを継続的に見直し、改善が可能になります。
3.企業文化への定着
DXを通じて企業文化自体を変革し、全社員が新しい業務形態やデジタル技術に対して前向きに取り組む文化の醸成を目指します。これにより、DXを推進する基盤が整い、組織全体でのデジタルシフトが可能となります。
DX経営に求められる5つの柱とは?
1.経営ビジョン・ビジネスモデルの策定
経営方針や中期経営計画にDXを盛り込み、DXを軸としたビジネスモデルを策定します。
既存の強みを活かしつつ、デジタル技術で新たな価値創出を目指すことが求められます。
2.DX戦略の策定
データ活用やデジタル技術を基に、ビジネスモデル実現のための具体的なDX戦略を設計し、企業の競争力を高める施策を実施します。特に製造業では、生産プロセスの効率化や顧客体験の向上を図る具体策が重要です。
3.DX戦略の推進
DX推進のための組織体制や人材育成の計画を整え、技術や資金面での支援を行います。
特に、製造業においてはデジタルスキルを備えた人材の育成や、サプライチェーン全体の連携強化が求められます。
また、サイバーセキュリティも重視し、ITシステムの保守・運用にも注力します。
4.生花指標の設定・DX戦略の見直し
DXの進捗と効果を測るためのKPIを設定し、成果を定期的に評価します。
得られた評価をもとに戦略の見直しを行い、目標達成に向けた改善を繰り返すPDCAサイクルを確立することが重要です。
5.ステークホルダーとの対話
社内外のステークホルダーにDX推進の進捗や目標、成果などを発信し理解と支持を得ることが重要です。特に製造業のDX推進では取引先や顧客とのデータ共有・活用が求められる場面も多い為、信頼性のあるデータガバナンス体制が必要です。
製造業DXの取り組み事例
最後に、製造業におけるDXの取り組み事例をご紹介いたします。
大企業の取り組み事例
企業の規模別にご紹介します。
まずは、大企業の事例から。
工場IoTを活用した生産効率の向上(ダイキン工業株式会社)
ダイキン工業は、AI・データサイエンスのJDSCと、空調機器のIoTデータを用いた不具合監視・運転異常予兆検出AIを共同開発しました。これにより、業務効率化や製品対応・改善のPDCAサイクル高速化の効果を挙げています。
検証段階ですでに、不具合監視AIは発生した事象やお客様の声を製品対応・改善に活かすPDCAサイクルを、従来比で1年以上も短縮。
さらに、従来は検出できなかった故障要因や予兆の検出にも成功しています。
建設機械の故障修理を効率化するスマホアプリを開発(株式会社クボタ)
農機具メーカーのクボタは、米国での建設機械の故障診断を効率化するためにスマホアプリ「Kubota Diagnostics」を開発。故障診断のプロセスを効率化することで、建設機械のダウンタイムを削減する取り組みを行っています。
機械が発するエラーコードや不具合症状をアプリに入力することで、自動的に点検箇所や修理方法が示され、診断を効率化・迅速化。これにより、顧客満足度の向上にもつなげる狙いがあります。
スマートファクトリー化による情報共有を実現(トヨタ自動車株式会社)
トヨタ自動車は、自動車製造における生産計画と人員配置の最適化を目的に、スマートファクトリーを推進しています。
各工場を横断する「工場IoT」を構築することで、各部署間の情報共有効率を高めています。
これにより、データの一元管理やリアルタイムでの情報共有を実現しました。
中小企業の取り組み事例
つづいて、中小企業での取り組み事例をご紹介します。
ノーコード開発で社内システムを内製化(株式会社今野製作所)
今野製作所は板金加工、機械修理、油圧機器製造などを手がける従業員わずか39名の小規模な製造業企業です。同社では、ノーコードを利用し生産管理システムを作り上げました。運用開始後の追加システム開発も社内の人材だけで行っています。
高スキルのDX人材を採用できなくても、従業員のITスキルを底上げすることでDXに取り組んでいる好例です。
同社の取り組みは、経済産業省の「攻めのIT経営中小企業百選2016」に選定されています。
加工技術を「見える化」し、加工の精度、生産性を向上(株式会社山本金属製作所)
山本金属製作所は、大阪で金属部品の切削加工を手がける製造業企業です。
同社では、まだDXという言葉が世に出る前の2007年から、熟練の職人にしか行えない加工技術を「見える化」するための技術の研究・開発に取り組み始めました。
金属切削加工の際に生じる熱や振動、負荷などを計測するセンサーを搭載した計測機器を独自に開発したことで、加工の精度、生産性の向上を成功させています。
同社の取り組みは、経済産業省の「DXセレクション2022」でグランプリを受賞しました。
まとめ
製造業におけるDX推進は、競争力向上や生産性改善のために欠かせない取り組みです。
しかし、人材不足や予算の制約、組織体制などの課題が存在します。
経済産業省のガイドラインを参考にしながら、戦略的な計画を立て、具体的な取り組みを進めることが求められます。
大企業だけでなく中小企業も、クラウドやIoT、AIを活用したDXの取り組みを推進することで、日本の製造業全体の発展に貢献することが期待されています。