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公差設計とは?部品の精度にかかわる重要な値の算出方法

最終更新日:2022.08.23 / 公開日:2019.09.05

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顧客のニーズに応じた製品を素早く提供することが昨今の市場では求められています。そのため、ものづくりにおいて、開発スケジュールをいかに早くするかが重要視されているのです。ただ、スピードを意識するあまり、公差設計を見誤って製品の品質が下がってしまえば元も子もありません。では、公差を決める際はどのようなポイントに注意すればよいのでしょうか。そもそもの公差の意味から、公差設計の仕方まで詳しくご紹介します。

公差設計の基礎知識

公差とは

公差とは指定された寸法から許される誤差のことを指します。例えば、150mmの素材を加工する際、全てを同じように加工しても、正確に同じ長さになることはなく、多少の誤差が生じます。この差は、小さくすることを心がけても0にすることは技術的に難しいです。そのため、目標の数値に対して許容できる範囲を製造の軸として設定します。公差はJISの中でも定義されている基準になります。

公差範囲を超えると、製品の品質や性能に影響を及ぼすため、範囲に収まるように製造することが必須です。また、公差の範囲内で生産する能力を工程能力指数といいます。

公差設計とは

公差設計とは、文字の通り公差を設定することです。公差を決める際は、製品や部品の仕様やコストを検討しながら進める必要があります。公差を厳しくすると製品の品質が上がり、後々の不具合も少なくなります。しかし、部品を加工する製造段階において厳重な管理が求められるため、製造コストが上がるのです。

ただ、公差が緩くなると完成品ごとの誤差も大きくなるため、出荷後にトラブルが生じ、製品の不良率も高まります。そうなると、結果的にコストが高くなる可能性があるのです。そのため、単一の視点から判断するのではなく、仕様やコストなどを総合的に考慮して公差を判断する必要があります。

公差設計の仕方

公差を計算する

公差の測定方法は、主に2種類あります。方法によって計算結果に差が発生するため、製造業務の方針に合わせて選択しなければなりません。企業によっては、2種類の方法を組み合わせるケースもありますが、ここではそれぞれの方法について解説します。

・最悪値を積み上げて計算する方法

全ての部品において、標準値からの差が最も大きい値を加算して求める方法です。この方法では、公差の範囲が厳しくなるため、製造コストがかかります。そのため、少量生産に向いています。

・不完全互換性の方法

不完全互換性は分散の加法性によって公差を求める方法です。統計を用いるこの方法では、部品の製造数が多いほど、部品を全体で見たときに最悪値となる確率が低くなるという考えに基づいています。求められる公差の値は緩くなりますが、正規分布のデータが求められるため、大量生産に適しています。

製造側の要求を考慮する

設計者からすると、製品の完成度を上げるために少しでも公差を厳しくしたいですが、製造現場からすると製作コストが高くなるのです。だからといって、公差を際限なく緩めてしまうと、製品のクオリティが落ちてしまいます。

そのため、どちらか一方の意見だけで公差を決めるのではなく、製造側など技術者の考え方も理解したうえで、公差の幅を決めることが非常に大切です。そして、製作コストと完成度のバランスを取れるような公差に設定することで、結果的にコストダウンにもつながります。

3次元における公差設計

3DCAD(3次元CAD)とは

3DCADとは3次元上に製造物の図面を作成できるシステムです。従来の2DCADでは、対象物を正面図、側面図、平面図のように複数の視点から見える形を2次元で表現していました。しかし、3DCADでは立体そのものを3次元上に作成するため、より自由な視点から対象物の確認が可能です。

また、3DCADでは手書きで製図するよりも効率的に作業が進められます。例えば、手書きでの製図で修正が必要な場合、修正箇所だけを消しゴムで丁寧に消す必要があるため、つい図面が破れたという経験を持つ人がいるかもしれません。しかし、3DCADシステムでは即座に変更が可能です。

さらに、図面はデータとして共有できるため、実務においても効率的に作業を進められます。また、3Dデータは自由な角度から見られるため、完成図をイメージしやすいという点はメリットです。

3DCADと公差設計

3DCADで設計しており、製造側との連携が求められた場合は、公差設計も3次元として考える必要があります。ただ、3DCADで作られたモデルは、従来の2Dのモデルよりも部品の寸法や接触位置、重力など多くの係数が影響するため、手計算で測定することは困難です。

そんなときは、3DCADの中で使える公差解析ツールを使いましょう。この機能では、解析した結果をモデルデータに反映できるため、より簡単に制度の高い公差設計が可能です。

まとめ

公差は単なるバラツキではなく、製品のクオリティに深く関係しています。設計者からすると、品質を維持するために公差を厳しくしたいところですが、それでは製作コストが上がってしまいます。反対に公差を緩めると品質の低下を招き、かえってコストがかかるかもしれません。

そのため、設計側と製造側の両方からの説明を聞いたうえで決定することが望ましいです。公差を見誤ることで開発スケジュールに遅れが生じることもあるため、早い段階から公差を設計しましょう。また、製図の際に3DCADが使われるケースが増えており、公差解析についてもツールを使うことで簡単に行えます。

3次元上のモデルは従来のものと比べると膨大な量のデータを持っているため、手計算だと非常に困難です。そのため、使用しているソフトに応じて、効率良く公差解析を実施し、コストを削減しましょう。

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