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【初心者向け】CADの基本的な使い方と図面作成の手順を解説
最終更新日:2024.11.20 / 公開日:2019.08.22
もの作りにおける品質向上と設計期間の短縮をする際にCADがあると便利です。しかし、CADの導入を検討する段階では簡単に使えるのかどうかや、本当にシステム導入メリットがあるのかなどさまざまなことが気になります。この記事では、CADの特徴や大まかな種類を簡単に触れつつ、CADを導入するメリット、具体的な使い方、これから新しくCADを導入する場合のおすすめのソフトウェアについてご紹介します。新たにCADの導入を検討している企業の担当者や経営者の方はぜひ参考にしてください。
目次
CADの特徴
CADはComputer Aided Design(コンピューター支援設計)の略で、パソコンにソフトウエアをインストールしてPC上で設計や作図などを行うためのシステムです。実際の試作品を何度も作ると設計時間の効率が悪い場合をはじめ、制作物が複雑な場合、大きすぎて試作品が作れない場合などでよく用いられます。CADが活用される業界は製造業や建築業、土木事業などが代表的で、CADにCAM機能を含んだCAD/CAMもあります。
CADの種類
CADは専用CADと汎用CAD、または2DCADと3DCADといった分け方ができます。ここでは、それぞれの違いについてご紹介します。
専用CAD
専用CADとは、ある分野の設計に特化し、設計効率を高めるのに便利なCADです。代表的なものには、建築用CADや機械用CAD、土木用CAD、電気用CAD、服飾デザイン用CADなどがあります。専用CADでは、その業界でよく使う機能があらかじめ準備されているのが特徴です。たとえば、建築用CADであれば外壁や設備のテンプレートがあり、3Dの外観を簡単に表示するための機能があります。機械用CADは抜きテーパーやリブを立てる機能、自由曲面を作るため機能などが含まれます。
汎用CAD
汎用CADは、「立方体や立体を組み合わせる」「円を描画する」「直線を組み合わせる」など特定の分野を問わない機能を備えたCADです。以下で説明する2D CAD(2次元CAD)と3D CAD(3次元CAD)の両方に対応可能なものも多い傾向です。専用CADとできあがりの形状がそれほど変わらなかったとしても、作成できる形に制限があったり、希望する形を作成したりするには専用CADよりも手順が多くかかることがあります。
2DCAD
平面的な設計検討をしたい場合や、手書きの図面をデータに起こしたいだけの場合などは、2DCADがあると便利でしょう。2DCDは、正面図や平面図、立面図などが製図できるCADです。直線を書く機能や、円弧を書く機能などを組み合わせながら希望する図面を作り上げます。部品表や履歴の表をはじめ、文字で注釈なども入れられます。
3DCAD
近年、普及しているCADは、はじめから立体の形状を定義して設計検討を行う3DCADです。ある形状をもとに粘土のように形を足し引きして立体を作るタイプ(ダイレクト・モデリング)と、円すいなど機能を持った形を定義して立体を構成していくタイプ(パラメトリック・モデリング)があります。
設計者の感性を活かして形を作りたい場合や、設計が固まった形状を立体にするのであれば、ダイレクト・モデリングに対応している3DCADがおすすめです。また、詳細な設計の途中で細かい設計変更がある場合はパラメトリック・モデリングに対応している3DCADが向いています。また、一度3DCADでデータを作っていれば、作図機能を選択するだけで簡単に形状を図面にできる機能が付いているのが一般的です。
CAMとCAD/CAMとは
CAM
CAMは、Computer Aided Manufacturing(コンピュータ支援製造)の略です。最近は前述のようなCADを使ってパソコン上で設計検討するのが一般的ですが、製品を量産する際は、実物を工場で作らなければなりません。CAMはCADで作成した図面データをもとにNC工作機械を操作するための加工プログラム(NCデータ)を作成するなど、CADデータを実際の量産につなげる途中で必要となるシステムです。
CAM自体には、ドリルやエンドミルの形状情報がもともと用意されています。CADのデータを取り込むと、形状に切削工具がぶつからないように切削方向を検討するのが賢明です。また、効率的に加工を行うためにテーブルや、部品をどのように回転させるなどの最適化も行います。CAMは、NC工作機械に限らず、マシニングセンタの多軸制御に対応している場合もあります。
CAD/CAM
パソコンで一般的なオフィスの文書を作成したり、表計算のソフトを切り替えたりするような感覚でCADとCAMを使い分けながら設計ができます。CAD/CAMがCAM単体と比べて優れているのは、設計変更に強いというところです。CADとCAMが分かれている場合には、それぞれのデータの互換性を保ちながらデータのやり取りをしなければなりません。
そのままのファイルを読み込めない場合には、中間ファイルと呼ばれる汎用性の高いデータ形式にいったん変更して読み込んでみましょう。データの読み込みは、特に問題ない場合もありますが、複雑な形状やテーパー、面取り部分などの形状が欠落したりずれたりする可能性があります。取り込んだデータに問題がないか確認するひと手間に時間がかかると、作業効率が悪くなってしまいます。
そこで同じメーカーのCADとCAMを導入するなど、データのやり取りが比較的スムーズです。そのため、CAD/CAMとしてCADもCAMも同じソフトウエア内に含まれている製品が多く扱われています。また、CAD/CAMでなくてもCADにCAMのソフトウエアをオプションとして追加して使えるようにするタイプのソフトウエアもあるので検討してみましょう。
手書きよりも簡単に製図できる!CADのメリット
製図を効率化できる
CADを使って設計する最大のメリットは設計変更に簡単に対応できること。必要な箇所の削除・修正や新たな要素の追加も簡単です。3DCADの場合、3Dの立体形状と図面とが関連づいていて、3Dの形状を変更すれば図面に自動的に反映されます。図面側ですでに寸法を入れている場合でも自動追従するため、新たに作図をし直す必要がありません。
部品図であればそれほど影響がないかもしれませんが、部品を複数組み合わせる組み立て図の場合、部品の寸法や形状が1つ変わるだけでも大変です。紙で作図していた場合には、部品図は形状変更していたものの、組み立て図の更新が行われていなかったので、部品が干渉してしまうというトラブルが起こる場合がありました。
また、作図には設計のルールがあり、形状線の太さや引き出し線の太さなどに細かく指定があります。また、立体形状を図面に落とす都合上、ある面を正面図にした場合投影法に準じて適切に形を書き起こさなければなりません。作図の知識が不十分な場合、側面図一つを作図するのにもとても時間がかかります。これに対してCADの場合、ある面を正面図として指定したら、それ以後の投影図は自動生成されるため、作図の効率が劇的に向上します。
また、裏側の形状は自動的に点線になり陰線表示ができたり、寸法の線の種類も書式で統一したりできます。このようにCADで図面を書く場合、手書き図面ほどは設計経験や技術を必要としません。CADの扱い方さえ覚えていればよいため、設計アシスタントなどでも図面作成がしやすくなります。たとえば、設計は設計者が行い、CADスキルがもともとある別の担当者がCADデータ作成を行うなどの分担を行えば、設計者は設計業務に集中でき、CADの操作を習得するためにかかるコストの削減も期待できるでしょう。
図面データの管理、共有がしやすい
設計は、自社内だけでなく他の設計拠点や外部の設計会社、クライアントなどと連携しながら行うのが一般的です。その場合、現在どのような形状になっているのか共有することが非常に重要になります。紙図面の場合にはスキャナでデータ化して送付するなど、ひと手間必要でしたが、CADの場合はデータがすぐに取り出せます。パソコン上にデータを呼び出せばさまざまな方法でデータの共有が可能です。
CADの場合は、デザインから営業、設計、生産部門までそれぞれが必要に応じていつでもデータを参照できる専用のサーバ(PDM:Product Data Management)を導入していることが多いでしょう。この仕組みを利用すると、CADの3Dデータと図面をリビジョンつきで保存でき、属性情報や、承認管理などを盛り込むことができます。また、元データがサーバ上にしっかり保存されているため、複製・共有が簡単で、複数人で同時に図面作成を行うことも可能です。
さらに過去の3Dデータと図面データを再利用して派生部品を作るのも簡単ですし図面が個人保管になってしまい紛失してしまうといったトラブルも減らせます。
CADの使い方と図面作成の手順
CADの基本的な使い方
- 1. デスクトップ上のアイコンをダブルクリックするなどしてCADのソフトウエアを起動
- 2. 機能の一覧が出てくるため、「3D部品を作りたいのか」「部品をもとに組み立てを行いたいのか」「図面を作りたいのか」などの選択を行う。CADではなく、CAMを使いたい場合などもここで選択する
- 3. 3D部品を作る画面を選択したら「新規作成」を選択。3次元形状なので、基本のセットとしてXYZの座標系や部品形状が入る領域などが表示される
- 4. まず、部品として正面となるYZ平面などを基準に正面の形状を作成
- 5. 4の形状に対して厚みをつける「パッド」などのコマンドを用いて厚みをつける。厚みの度合いはマウスで必要な分だけ引き延ばしても構いませんし、「50mm」などと寸法で定義することも可能
- 6. 同じようにある平面に基準となる形状を作成し、一つ一つに厚みをつけていく。もし不要な場所があれば「ポケット」などと呼ばれるくりぬくための機能で切削を行う。それぞれの機能を組み合わせてベースの形状を作る
- 7. ある程度形状が完成したら抜きテーパーや面取り、R面取り(フィレット)などを追加し部品の形状は完成。最終形状は忘れずに名前をつけて保存
- 8. 1~7を繰り返して必要な点数分の部品を作成
- 9. 3DCADで組み立て図面を作成する場合は、設計意図として製品の原点を決め、そこから各部品を配置する向きや場所を決める。配置する場所が決まったら8までで作成した部品のデータをCADの画面上にまとめて開き、それぞれの位置合わせを行う
図面の作成手順
・2DCADの場合
- 1. CADを起動して、図面を作成するアプリケーションを選択する
- 2. 図面を「新規作成」する機能を選択。図枠をあらかじめ用意している場合は、図枠のデータを開く
- 3. 「直線」「円弧」「フィレット」などの機能を組み合わせて必要な形状を作成
- 4. 「寸法」「バルーン」「注記」「表」などの機能を組み合わせて図面を完成
- 5. 「名前をつけて保存」を行う
・3DCADの場合
3次元上で部品を作成したうえで、その形状をもとに図面の編集を行います。設計変更がある場合には、3Dの形状を変更すると図面も自動的に変更されます。
- 1.あらかじめ作図したい3Dデータを画面に表示させておく
- 2.CADを起動して、図面を作成するアプリケーションを選択する
- 3.図面を「新規作成」する機能を選択。図枠をあらかじめ用意している場合は、図枠のデータを開く
- 4.「3D形状を投影」する機能を選択し、3D形状を読み込む。その際、「正面図だけにするのか」「側面図や平面図なども一緒に作成するのか」を選択。各投影図は後で追加も可能
- 5.「寸法」「バルーン」「注記」「表」などの機能を組み合わせて図面を完成させる
- 6.「名前をつけて保存」を行う
・過去の図面を読み込んで2DCADで作図する場合
うまくデータ変換を行えば過去のCADで作成した図面やpdfなどからデータを読み込むことも可能です。
- 1.ソフトウエアを起動し、「既存データの読み込み」機能などから必要な図面データを読み込む
- 2.線の太さや色、などを整え、必要な形状を新規作成する
- 3.過去の図面を参考に見るだけの場合には、「レイヤ」機能を設定し、別のレイヤで新規に作図をすると便利
- 4.最後に「名前をつけて保存」を行う
難しい形状も簡単に作成!おすすめのソフトウエア
製品名:Autodesk Fusion (Fusion360)
主な特徴:CADの世界的トップシェアを誇るAutodeskが提供するクラウド型CAD/CAM「Autodesk Fusion (Fusion360)」。3Dモデル作成・設計・シミュレーション、そしてCAMまで対応できる高機能が特長です。
また、コストは1年間 ¥88,000(税抜)のサブスクリプション契約です。ポイントは、この費用内にバージョンアップ料金が含まれているということ。一般的なソフトは、バージョンアップの際に保守契約の加入が必須となりますが、Autodesk Fusion (Fusion360)であれば不要。さらに、更新はネット上で自動的に行われるため、ユーザー側の操作がなく手間がありません。
また、クラウド型なので場所を選ばずソフトを使用可能です。遠方の別工場ライセンスおよびファイルをネット経由で共有する、といった使い方が容易に行えます。
なお、当社でAutodesk Fusion (Fusion360)をご契約いただいたお客様には、充実のサポートをご用意しております。電話・メール・リモートサポートに加えて、集合講習会へのご参加、パソコン割引券の進呈などをご用意しております。汎用的かつ便利に利用できるCADをお探しの方は、ぜひAutodesk Fusion (Fusion360)の導入をご検討ください。
製品名:SOLIDWORKS
主な特徴:たくさんの機能があり、直線的な部品だけでなく、自由曲面を作る機能もあるCADです。部品を組み合わせたうえで組み立て図面を作図する機能や、干渉チェックやデザインレビューや営業部門などに便利な3Dレンダリング機能なども搭載しています。CADの機能や価格が中ほどであるとミッドレンジCADに分類されており、ハイエンドCADよりも手軽に導入できることから、機械・家電・精密機器などの設計に用いられています。
作図をする場合は2DCADとして作図できるほか、3次元のデータをドラッグ&ドロップなど簡単な操作で図面内に形状を投影し、設計変更した場合でも履歴を追従させながら形を作ることが可能です。寸法を定義する際は3次元のデータをもとに寸法を自動生成する機能があり、すべての形状寸法をそれぞれ定義することなく効率的に作図できます。
SOLIDWORKSにはワークベンチと呼ばれるさまざまな機能のグループがあり、必要に応じて詳細な設計検証を行うシミュレーション機能(CAE:Computer Aided Engineering)なども導入可能です。また、CAMも利用できるため設計部門と生産部門が同じデータを使いながらものづくりをすすめることもできるでしょう。
さらに、電気設計部門で使っている基板やパターン設計用CADの読み込みなどにも対応しており、全開発工程に渡るデータ連携に役立ちます。
CADは簡単な操作で設計の効率化に貢献
CADは操作が難しいというイメージがあるかもしれませんが、画面にたくさん機能が並んでいるだけで、必要な形状に合わせて使い分けると比較的簡単に形状作成ができます。また、図面を作成すること一つをとっても、一度3次元で形状を作成してしまうのがよいでしょう。設計変更などにも簡単に対応できるため、最初に3次元形状と図面を関連づけていれば、設計検討が進んでいく過程で新しく作図をし直す手間が減らせます。このほか、さまざまな分野で設計の効率化が期待できますので、興味のある方はぜひ一度お問い合わせください。