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金型の製作に重要な公差とは?CADで指定するときの注意点

最終更新日:2022.04.20 / 公開日:2020.02.03

金型公差

金型には、板金部品を加工するクッキー型のような「抜型」と、樹脂部品などの成型に使われる「たい焼き型」のような金型など種類はさまざまです。物質は、圧力をかけると伸び縮みしますが、物質にかけられた力に抵抗しようとする力の一部が内部に残りひずみを生じます。
設計を行う場合は、ひずみを考慮して設計意図を盛り込むために公差を活用することが必要です。この記事では、金型の製作に重要な公差の基礎とCADで公差を指定する際に注意したいことについて解説します。

金型設計時に必要な公差とは?

ひずみの調整に必要な公差

ひずみとは、ある物体に力を加えた場合に物体がどのくらい変化するかの割合です。物体に力を加えると、その力の向きに従い伸縮やねじれが生じます。また、物体には外から力を加えるのをやめたとしても変形を防ごうとする力(応力)が残っている場合があり(残留応力)、残留応力がひずみの原因になりかねません。特に、金属には最初の加工時に生じたひずみがあり、折り曲げや切削など加工することでさらにひずみが大きくなります。

ひずみの割合は、材料ごとに微妙に異なるため、同じ条件で加工を行ったとしても図面に記載された数値ぴったりに部品を加工するのは難しいです。そのため、設計では公差は指定された基準値から許されるばらつき範囲として図面に公差を指定する必要があります。生産部門では各々の部品について測定を行い、公差の範囲であれば部品の形状に誤差があっても良品として取り扱われます。

普通公差(一般公差)とは

普通公差(一般公差)とはJIS規格で定められている公差であり、寸法の大きさと加工の精度を組み合わせた表で示されるものです。普通公差には4段階の公差等級があり、精級(記号:f)、中級(記号:m)、粗級(記号:c)、極粗級(記号:v)の4段階で示されます。

たくさん寸法公差が入っていると部品を製造する難易度があがるため、生産する加工者にとっては、プレッシャーになることも多いです。設計上特に管理したい寸法以外は、「普通公差で作図されている」という注記を盛り込めば、すべての図面に公差を入れる必要はありません。

公差の主な種類

寸法公差

寸法公差とは、図面の寸法に対し、許容される誤差の範囲のことで寸法の最大値と最小値の差で示します。寸法は、長さや距離、位置、角度などを定義。公差を定義する際は、寸法のうち基準や機能的に重要な寸法、関連する穴など設計上管理しておきたい箇所に対して付与します。

幾何公差

幾何公差とは、図面の形状に対し、許容される誤差の範囲のことで記号とともに図面に記載されます。「ある部品のうち特定の平面は組み合わせるために確実に平らである必要」「この部位を基準に位置合わせを行ってほしい」など形状各々に対する指示ができます。そのため、垂直度や平行度、位置度など種類が豊富です。

はめあい公差

はめあいとは、組み合わせたい穴と軸の間で許容できる公差の種類で、確実に穴に軸が入るように指示するものです。設計では、部品Aの穴に部品Bの突起などを組み合わせて位置決めや摺動、固定などに用いることが多いです。そのため、穴と軸のどちらかを基準として、穴公差と軸公差をセットで定義するのが一般的です。

CADデータにおける公差指定の注意点

3DCADには寸法公差の記載がない事が多い

近年では、CAD上に直接寸法や寸法公差、幾何拘束などの設計意図が盛り込める3Dアノテーション機能をもつCADが普及し、3Dに対して寸法や公差などを直接入れるケースが増えています。かつて生産部門では形状は3Dで確認し、公差や物性、注記など形状以外の製造情報は2D図面や補足資料などから参照していました。この3Dアノテーションを活用すると分散していた情報が一元化できるため、効率よく生産をすすめることが可能です。

しかし、生産工場や海外拠点などでは、設計部門と全く同じCAD環境ではないことも一般的です。その場合、複数のCAD同士でデータが共有できる中間ファイルにデータ変換をして情報のやりとりを行います。ただし、この中間ファイルは設計時に盛り込んだ情報のすべてが伝えられるわけではありません。中間ファイルやデータを受け取る側のCADの仕様などにより展開できる情報が微妙に異なるため、せっかく3Dデータ上で寸法公差情報を盛り込んだとしても、中間ファイルを通すことで失われてしまう場合があります。

そこで、寸法公差の情報を正しく伝えるためには、作成したCADの生データもしくは、「STEP AP242」に対応したCADであれば情報を受け取れるようにすることが必要です。

寸法の記載忘れをしない

生産部門に3Dデータのみが渡り2Dの図面が提供されていないと、機械精度などあいまいな条件で部品が加工されてしまうかもしれません。また、2Dの図面が添付されている場合でも、重要管理寸法以外の寸法が未記入となっていることがあります。3Dデータがあれば寸法を測定できる場合もありますが、作図は図面上の情報で形状が作れるように作図するのが原則です。そのため、3Dデータと2D図面を一緒に生産部門の加工者へ渡す場合には、情報の抜け漏れがないか、確認することが大切です。

金型設計では設計意図に応じて公差を使い分けよう

物質にはひずみがあり、必要な形状に加工する際にさらにひずみが大きくなります。そのため、金型の設計を行う場合、材料の物性や設計要件、加工条件を考慮して寸法公差や幾何公差を定義する必要があります。また、3DCADで設計を行う場合、寸法公差や幾何公差を盛り込めるようになってきていますが、生産工程へ確実にデータが渡るかどうか確認することも重要です。

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