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エッチングとは?半導体製造に欠かせない重要な工程の基礎知識

最終更新日:2022.01.06 / 公開日:2022.01.06

半導体製造の前工程では、エッチングと呼ばれる加工によって、ウェーハ上に設計どおりの寸法・形状の加工が施されます。非常に緻密かつ繊細な電路等であっても正確に加工できるのは、エッチングならではの特徴と言えるでしょう。こちらの記事では、エッチングの概要や手法、具体的な工程などについて解説します。

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エッチングとは?

半導体製造におけるエッチングは、精密な電路を作るといった用途で用いられる加工法です。ただし、活用分野は半導体製造だけに留まりません。以下から、エッチングの概要やメリットなどを含め、ご紹介します。


エッチングの意味

エッチング(etching)は、表面加工に用いられる加工法のひとつです。一般的には、凹版画においてエッチング液(腐食液)などの化学薬品やフッ素などの反応ガス、イオンなどを使用し、化学反応による腐食作用を起こして、金属板などの被加工物を溶解・蝕刻加工します。つまり、切ったり削ったりするのではなく、必要な部分だけを溶かして除去し、材料表面を加工する方法です。
腐食作用を利用するという特性上、被加工物の材料・材質は金属であるケースが多く、たとえば鉄や銅、アルミ、ステンレスといった素材の加工で利用されます。小さくて薄く、複雑な形をした製品の加工にも適用可能であり、現在の半導体製造には欠かせない重要な行程のひとつとして活用されています。 具体例を見てみましょう。プリント基板は素子やICなどをつなぐために銅箔を用いた電路を作ります。複雑なものになると電路設計は非常に緻密です。かつ、近年は機器の小型化も進められたため、より精密な電路が必要になります。
この際に用いられるのがエッチングです。基板に銅箔を密着させ、エッチングを施すと、不要部分が適切に取り除かれ、繊細な電路を実現できます。

半導体製造以外のエッチング活用分野

エッチングはそもそも、銅板による版画・印刷技術技法のひとつとして長く発展してきた歴史を持ちます。腐食を利用するため、食刻と呼ばれることもあり、銅や亜鉛など、腐食性のあるものに対して、さまざまな加工がなされてきました。そのため、半導体製造以外の分野でも幅広く活用されているのが特徴です。 版画や印刷以外だと、写真やインテリアデザイン、意匠品などが挙げられます。また、半導体ウェーハの加工には、こうした分野で培われた写真製版技術を進化させたものが採り入れられています。たとえば、精密写真と腐食加工の応用によりフォトエッチングはその代表例です。

エッチングによる加工のメリット

エッチング加工では、図面やデータを基にCADを用いた原版を作成します。他の加工法のように、金型の設計・作成は不要。そのため、イニシャルコストが抑えられるほか、加工時間の短縮にもつながります。また、パターンの変更や何らかの修正が必要になった場合でも、金型のように変更による手間がありません。 また、非常に精度が高い加工が行える点も大きなメリットです。エッチング加工は腐食による溶解加工、つまり非接触加工であるため、切削や研削などで懸念されるバリやカエリ、歪み、たわみなどの発生がありません。加工対象が薄い板などの場合でも、繊細な加工を施せます。

エッチングの2つの手法

エッチングは大きく「ウェットエッチング」と「ドライエッチング」の2つの種類があります。それぞれ、腐食作用によって不要部分を取り除くのは同じですが、手法には大きな違いがあります。

ウェットエッチング

もっとも一般的なエッチングの手法です。酸性・アルカリ性溶液のエッチング液を使った化学反応によって膜を削り、露出部分を除去するのが一連の流れです。後述するドライエッチングに比べると薬液や装置のコストが安く、さらに同じ薬剤で複数枚の加工ができる点においても経済的かつ生産的です。また、被加工物に対してのダメージが少ないという面も大きなメリットとして評価されます。

ドライエッチング

高真空プラズマを用いたエッチング方法です。被加工物を真空環境に置き、ガスをプラズマ化した上でイオンをぶつけ、不要な部分を取り除きます。 非常に精密な加工が行えるのがメリットですが、一方でガス・装置ともにコストが高いのが難点です。また、ガスの濃度・温度の管理や、複雑な装置構造への理解といった手間もデメリットに数えられます。

半導体製造におけるエッチング工程

ここからは、半導体製造におけるエッチングの工程について解説していきます。

半導体製造の主な工程

エッチングは半導体製造の前工程に含まれる作業です。前工程での主な作業は以下です。
●電気回路の設計
●シリコン等の単結晶の塊(シリコンインゴット)をスライスしウェーハを作成
●ウェーハの表面の酸化・成膜
●回路図のパターン転写、露光・現像
●エッチング
●不純物の注入
●電極形成 など
上記の完了後、組み立て等を行う後工程が行われて半導体が完成します。

エッチング工程の内容

より具体的なエッチングの工程についても見ていきましょう。 CADなどにデータを入力し、レーザプロッターでフィルム感材・ガラス乾板へ描画パターンを作成していきます。チェック後には、整面や脱脂など、レジストの密着度を高めるための処理が行われます。 その後、ウェーハ(被加工物)の表面にレジストが付着(塗布)され、露光を開始。レジストが転写されます。露光転写されたレジストの未露光部からレジストを取り除くと、金属が露出します。 いよいよここからがエッチングです。加工に使うのは、エッチング液の自動制御を行うエッチングマシーン。この装置によって、レジストにマスキングされていない金属の露出部分を溶解除去し、半導体のパターンを図面の寸法・形状通りに残します。その後、エッチング加工された製品上のレジストを取り除き、洗浄・検査が行われます。

高精度な加工を実現できるエッチング

切削やプレス打ち抜きと異なり、非常に繊細で緻密な加工が行えるのは、エッチングならではのメリットです。同時に、小型かつ複雑な設計が行われる近年の半導体製造においては、なくてはならない技術と言えるでしょう。その意味で、現代のものづくりにおける重要な加工技術であることに間違いありません。


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