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5軸加工の特徴とは?CAMのおすすめ製品と2種類の加工方法

最終更新日:2025.04.28 / 公開日:2025.04.02

5軸加工とは、従来のX軸・Y軸・Z軸の直線軸に、回転軸と傾斜軸の2軸を追加した機械(加工機)で加工することをいいます。
複雑な工作物を制作する場合、加工軸が少ない工作機械だと頻繁に部材の固定角度を変える必要があり、でき上がりの工作物の精度に影響を与える恐れがあります。複雑な工作物において高精度を維持したい場合は、5軸加工が必要不可欠です。

ここでは5軸加工の基礎知識、メリットとデメリット、そして5軸加工機・加工方法の種類とあわせて、5軸加工対応のおすすめのCAMについて、ご紹介いたします。

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5軸加工とは?

5軸加工の特徴

従来、工作機械の分野は、X軸・Y軸・Z軸の3軸を使った3次元加工が主流でした。
元々は穴あけなど1軸加工から始まり、平面の2軸加工を経て進化してきたのです。

そして昨今は、5軸加工が増加傾向にあります。
5軸加工とは、X軸・Y軸・Z軸の直線軸に回転軸と傾斜軸の2軸を追加した機械(加工機)で加工することを言います。
5軸加工においては、この回転軸と傾斜軸がキーポイントです。この2軸の使い方によって2種類の加工方法に分類されます。
従来のX軸・Y軸・Z軸のみの3軸加工と比較して、5軸加工ではより柔軟な加工ができるため、多くの分野で注目され、導入が進んでいます

3軸加工機と5軸加工機の違い

改めて、3軸加工機と5軸加工機の違いを整理してみましょう。

基本的な構造と動作の違い

3軸加工機は、X軸、Y軸、Z軸の3つの軸を使って工作物を加工します。これに対し5軸加工機は、X軸、Y軸、Z軸に加えて、回転傾斜軸であるA軸とB軸またはC軸が追加されます。

この追加された2つの回転傾斜軸により、工作物の位置を自在に変えながら加工でき、より複雑な形状の加工が可能です。
具体的には、工具がさまざまな角度から工作物にアプローチできるため、従来の3軸加工では困難だった曲面や斜面の加工が容易に行えます。

加工の自由度と精度

3軸加工機では、工作物の各面を加工するために、工作物自体を手動で再セットアップしなければいけません。
このプロセスは時間がかかり、再セットアップのたびに微小な位置ズレが生じ、加工精度に影響を与える可能性もあります。

一方5軸加工機では、一度のセットアップで多面的な加工が可能です。そのため、再セットアップによる誤差を最小限に抑え、高精度を維持することができます。
部品の精密さが求められる航空機や医療機器などの製造において、5軸加工機は非常に重要です。

作業効率と生産性

3軸加工機では、複数回のセットアップと工具交換が必要なため、作業時間が長くなる傾向があります。特に複雑な形状の部品を製造する際には、加工工程が増え、手間がかかります。
これに対し、5軸加工機は、一度のセットアップで多面的な加工を行えるため、作業効率の大幅な向上が可能です。その結果、生産サイクルが短縮され、全体の生産性が向上します。
具体的な例として、自動車のエンジン部品や航空機のタービンブレードなど、複雑な形状が必要な部品の大量生産において、その効果は顕著です。

5軸加工の特徴

5軸加工には、主に次のような特徴があります。

複雑な形状の加工が可能

5軸加工の最大の特徴は、複雑な形状の加工が可能な点です。通常の3軸加工機では難しい、複雑な形状や曲面の加工が容易に行えます。
そのため、製品のデザイン自由度が飛躍的に向上し、より高度な機械加工が実現可能となりました。

高い精度と品質の向上

5軸加工機は、部材の位置を一度設定するだけで、多角度から加工できます。
このため、部材の再セットアップによる誤差を最小限に抑えることができ、高精度な加工を実現します。
また、工具の最適な角度を維持することで、工具の寿命が延びるとともに、加工面の品質も向上します。

作業時間の短縮と効率化

5軸加工機は、一度のセットアップで多面的な加工を行うため、作業時間の大幅な短縮が可能です。
従来の加工方法では複数回のセットアップと加工が必要でしたが、5軸加工機ではそれを一回で完了させることができます。この結果、生産効率が大幅に向上し、コスト削減にもつながります。

多様な材料への対応

5軸加工機は、金属、プラスチック、木材など、さまざまな材料に対応可能です。
特に、航空宇宙・自動車産業では、軽量かつ高強度な材料が求められるため、5軸加工機の導入が進んでいます。

自動化とデジタル化の推進

近年の5軸加工機は、CAMソフトウェアと連携し、加工プログラムを自動生成することが可能です。
特に、Autodesk Fusion などのCAMソフトウェアは、使いやすさと高い機能を兼ね備えた製品として、幅広い業界で利用されています。
CAMソフトウェアを使用することで、従来の手作業によるプログラム作成の手間を省き、加工の自動化とデジタル化を推進できます。

5軸加工のメリット

上記「特徴」と重複する部分はありますが5軸加工の主なメリットは以下3点です。

加工時間を短縮できる

加工軸が少ないと、一度に作成できる加工機データは限られてしまいます。そのため、工程を細かく分解して、定期的に部材の角度を変えながら加工していく必要があるのです。
また、工程ごとのツールパスが必要となり、それに合わせてNCデータも増えていきます。問題やトラブルが引き起こされる原因となるうえ、全ての工程を終わらせるためには、かなり時間がかかってしまうでしょう。

5軸加工では1回の段取りで多くの部分を加工することができるため、作業を高速化させて短時間で目的の形状を作り上げることが可能です。

周速ゼロ点を回避できる

ボールエンドミル加工などを行う場合、3軸加工では工具先端の周速ゼロ点で加工されてしまいます。これは、面粗度や加工精度が悪くなる要因の一つです。
5軸加工ではボールエンドミルを傾斜させることが可能なため、周速の高い部分で加工することができ、精度の維持にも貢献します。

加工コストの削減が期待できる

さまざまな角度で切削などを容易に行えるため、3軸加工で必要だった特殊工具や専用治具が不要です。
余計な工具を購入せずに済むため、加工コストの削減が期待できるでしょう。

5軸加工のデメリット

5軸加工には、デメリットもあります。導入時には、デメリットも把握して検討することが重要です。

重切削に向いていない

重切削を行う場合、5軸加工はあまり向いていません。これは、3軸加工機と比べて軸数が多い分、機械のトルク数が弱いことが多いためです。
切り込み量の多い粗加工や、大きな工具を使用した重切削には、3軸加工機を使用することも検討しましょう。

ワークサイズが制限される

5軸加工機は、3軸加工機よりも構造が複雑で、結果としてテーブルサイズが小さい傾向があります。
大きなものを5軸加工機で加工したい場合、機械全体の大きさが3軸加工機の場合よりも大きくなってしまうでしょう。

必ずしも加工精度が高いわけではない

5軸加工は複雑な加工を得意としていますが、必ずしも加工精度が高いとは言い切れません。
セットアップ時に微量でも位置の誤差があった場合、回転軸の動きが加わることでその誤差が増幅してしまうためです。
5軸加工の加工精度を最大限に高めるためには、セットアップの誤差をなくすことが非常に重要だといえます。

コストがかかる

5軸加工を導入するには、3軸加工と比べて初期投資のコストが高くなりがちです。
加工機自体が高価なだけでなく、必要な工具が多岐にわたったり、5軸加工対応のCAMソフトウェアを導入する必要があったりと、さまざまな費用がかかります。
予算に限りがある場合、優先度を決めて段階的に導入するなどの工夫が必要です。

5軸加工機の種類

5軸加工機には、大きく分けて3種類の機械があります。

回転傾斜テーブル型

ヘッド側ではX・Y・Z軸を制御し、回転・傾斜軸はテーブル側で制御するタイプが「回転傾斜テーブル型」です。後述の「同時5軸加工」を行う加工機としては、最も一般的だと言えるでしょう。

回転傾斜テーブル型は、テーブルが移動しないため機械全体のサイズを抑えやすいのが特徴です。また、ヘッド側が直線軸のみなため、直感的に座標を把握しやすいというメリットもあります。
5回転軸や傾斜軸が大きく動き、あらゆる角度からの加工を得意としますが、一方で重量物の加工には不向きです。回転・傾斜の両方を制御するために複雑に動く
テーブルに重量物を乗せると、負担が大きくなりすぎることがあります。

傾斜ヘッド回転テーブル型

「傾斜ヘッド回転テーブル型」は、傾斜軸はヘッド側、回転軸はテーブル側で制御するタイプです。傾斜軸をヘッド側で制御する分、X軸・Y軸のいずれかはテーブル側で制御します。
このタイプはテーブルが傾斜しないため、重量物でも安定して加工できます。
また、ヘッドが横型なので、深物加工が得意で、切削くずを排出しやすいというメリットもあります。
一方で、ヘッド側で制御する傾斜軸の可動範囲が狭いのが難点といえるでしょう。

回転傾斜ヘッド型

回転軸・傾斜軸の両方をヘッド側で制御する、「回転傾斜ヘッド型」というタイプもあります。このタイプは、X軸のみをテーブル側で制御します。
このタイプはテーブルが傾斜・回転しないため、重量物や大型の加工に強いです。
さらに、門型ヘッドの加工機であればテーブルは一切動かないため、相当な重量物や大物でも安定して加工できます。
ただし、回転軸・傾斜軸両方において可動範囲が狭い点は留意しておきましょう。

5軸加工の種類

5軸加工の方法にも、「割り出し5軸加工」「同時5軸加工」の2種類があります。

割り出し5軸加工

割り出し5軸加工とは、加工の際はX軸・Y軸・Z軸の3軸だけを稼働させる加工方法です。回転軸と傾斜軸の2軸は、加工前に任意の角度でテーブルや台を操作・回転し、固定してから加工を開始します。
「位置決め5軸加工」と呼ばれることもあります。
これは、工作機械設備の一つであるマシニングセンタが導入された当初より採用されてきた方法です。ワンチャッキングでさまざまな方向から加工でき、従来の3次元加工に比べて、格段に段取り替えの工数を削減できます。

割り出し5軸加工は、工数削減だけではなく、非常に高精度な仕上げ加工や部品加工ができることでも評価が高いです。さらに、剛性も高いことから現在も多くの需要があります。

同時5軸加工

同時5軸加工とは、X軸・Y軸・Z軸・回転軸・傾斜軸のすべてを同時に動かす加工方法です。
自由に工具の角度を変えることができるので、3次元(3D)局面加工などでも重宝するでしょう。
特に、正面から見た時に加工面が隠れる形状の製品を加工したい場合でも、同時5軸加工であれば、加工作業を自動で簡単に行うことが可能です。工具の干渉を効率よく回避しながら、継ぎ目の少ない加工を実現できるというメリットがあります。

5軸加工に対応しているフアクトのおすすめCAM

フアクトでは、5軸加工に対応しているCAMソフトとして、「FeatureCAM」をおすすめしています。FeatureCAMの主な製品仕様は次の通りです。

製品名:FeatureCAM

機能・特徴:
Premiumで割り出し5軸、Ultimateで同時5軸加工を設定することが可能です。
FeatureCAMは、2次元や3次元加工と同じ感覚で5軸の加工を作成できるのが特徴です。 割り出し5軸は、加工方向を設定するほかは、2次元・3次元加工と同じ流れで作成できます。同時5軸においては、5軸の設定項目が1ヵ所増えるだけで、後は割り出し5軸加工と同じ流れで作成可能です。

FeatureCAMにはCAD機能や干渉チェック機能もあるため、複雑な作業を極力抑えて簡単に加工データを作成できます。メーカーサポートも充実しているので、採用を検討してみてはいかがでしょうか。

5軸加工対応のCAMで効率良い生産を実現

5軸加工では、これまでの3軸に加え、回転軸と傾斜軸を操作できます。そのため、3軸加工に比べてより柔軟に、高精度な加工物を制作できるようになるでしょう。

5軸加工を行うためには、5軸加工に対応したCAMを使用する必要があります。
今回おすすめしたFeatureCAMは、割り出し5軸加工、同時5軸加工の両方に対応できるため、導入することで適切な5軸加工を実現できるでしょう。

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